血圧対策は食事から。血圧対策によい食べ物・飲み物とは?

血圧対策によい食べ物・飲み物とは?

監修者
プロフィール

市原 淳弘先生(いちはら・あつひろ)
東京女子医科大学 高血圧・内分泌内科 教授
1986年慶應義塾大学医学部卒業。日本高血圧学会高血圧専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医。現在、東京女子医科大学 液性病態制御内科学教授・基幹分野長、日本高血圧学会理事、日本妊娠高血圧学会理事長なども務める。主な著書に『「治せる高血圧」を見逃すな!カギは、ホルモンだった!』(学研プラス)、『食べ方、座り方、眠り方で下がる!血圧リセット術』(世界文化社)などがある。

血圧が高めと指摘されたら、すぐに取り組みたいのが食事の改善です。ポイントは、「減塩」プラス「塩出し」。おいしく食事をしながら、無理せずに続けることが成功の秘訣です。血圧を下げる効果のある食べ物や飲み物を知り、生活に取り入れてみましょう。

1.血圧対策の食事の基本が「減塩」なのはなぜ?

血圧対策の要といえば「減塩」ですが、実は塩分そのものが血圧を上げるわけではありません。まずは、血圧上昇と塩分との関係を正しく理解しておきましょう。

1日の塩分摂取が5gを超えると血圧は上昇

塩分は人体にとってなくてはならないミネラルです。本来、必要なはずの塩分が、なぜ血圧の上昇に関与するのでしょうか。その答えは腎臓の働きにあります。

腎臓は血液中の塩分濃度を一定に保つ機能をもつ臓器です。その機能には限界があり、腎臓の塩分調整機能が追いつかないほど塩分を過剰に摂取すると、血圧をコントロールしきれず、血圧が上がってしまいます。

近年の研究では、1日たった5gの塩分で、塩分摂取量が3g以下の人の約3倍も血圧が上昇することが分かっています。

塩分の摂取基準は? 無理ながまんではなく「塩分は食べたら出す」と考えよう

日本高血圧学会は、高血圧の人に向けて、男女共に1日6g未満の塩分摂取を推奨しています。しかし、現実はというと、日本人の1日平均摂取量は男性が10.5g、女性は9.0g(※)で、推奨値を大きく超えています。
※厚生労働省「国民健康・栄養調査」(令和4年)より

 日頃から減塩を意識し、薄味に慣れるのが理想的。でも、無理ながまんは長続きしないので、市販の減塩調味料なども上手に活用しましょう。

また、「塩分を摂り過ぎてしまったら、“塩出し”をする」と前向きに意識を変えることも大切です。例えば昼に塩分が多めの食事をしたら、夜は野菜や果物、海藻など、“塩出し”効果の高い食品を多めに摂り、腎臓の血圧コントロール機能をサポートしましょう。

塩分の摂取基準は? 無理ながまんではなく「塩分は食べたら出す」と考えよう

日本高血圧学会は、高血圧の人に向けて、男女共に1日6g未満の塩分摂取を推奨しています。しかし、現実はというと、日本人の1日平均摂取量は男性が10.5g、女性は9.0g(※)で、推奨値を大きく超えています。
※厚生労働省「国民健康・栄養調査」(令和4年)より

日頃から減塩を意識し、薄味に慣れるのが理想的。でも、無理ながまんは長続きしないので、市販の減塩調味料なども上手に活用しましょう。

また、「塩分を摂り過ぎてしまったら、“塩出し”をする」と前向きに意識を変えることも大切です。例えば昼に塩分が多めの食事をしたら、夜は野菜や果物、海藻など、“塩出し”効果の高い食品を多めに摂り、腎臓の血圧コントロール機能をサポートしましょう。

血圧対策に要注意の食品と、減塩しつつおいしく食べるコツ

現代は、スーパーやコンビニに行けば、塩分がたっぷり入った食品が数多く並んでいます。何を選ぶか、また調理法の一工夫で塩分過多を防げます。

<塩分要注意食品>

即席ラーメンには5.4g、すき焼き1人前で6.1g、コーンスープには7.1gもの塩分が含まれています。ヘルシーなイメージのある梅干しおにぎりも2個で4g、焼き魚定食には5gの塩分が含まれており、例えば、おにぎりと即席みそ汁などの手軽なランチは、日本高血圧学会が推奨する1日6g未満を、1食で軽く超えてしまうので注意しましょう。

<薄味でも、おいしく食べるコツ>

塩分控えめの薄味でも、ちょっとした工夫でおいしく食べられます。おすすめはお酢やかんきつ類の果汁を利用すること。塩やしょうゆの代わりに、酢やレモン汁をかけるだけで、揚げ物や焼き物の塩気がアップしたように感じます。

ハーブやスパイスも減塩の強い味方です。ねぎや大葉、みょうが、にんにく、生姜などの香味野菜を上手に活用すれば、塩気が少なくても味にメリハリがついて、おいしさがアップします。こしょうや唐辛子などのスパイスで味に変化をつけるのも、うま味アップのポイントです。

また、しょうゆやみそなど、使い慣れた調味料を「減塩タイプ」に変えるだけでも、塩分は減らせます。塩やしょうゆを多用する和食は洋食に比べて塩分が高めなので、血圧が高めの人は、塩分を減らしやすい洋風メニューを取り入れるのも一案です。

ただ、こうした工夫をしても、わずか1品で1日の塩分摂取量に達してしまうメニューは結構あります。特に注意したいのが、ラーメンやうどんなどの麺類。麺類の汁は飲み干さず、残す習慣をつけましょう。

2.血圧対策によい食べ物はこれ! 「塩出し」してくれる食品を味方につけよう

塩との新しいつき合い方として、ぜひ取り入れたいのが「塩出し」の習慣です。塩出しパワーの強化に欠かせない3つの食べ物を紹介します。

血圧対策によい食べ物①「カリウム」の多い食べ物

塩出しの強い味方といえば「カリウム」。カリウムには余分な塩分(ナトリウム)を尿として排出する作用があります。塩分を摂ったら、その2倍の量のカリウムを摂る「1:2」のバランスを心がけましょう。

カリウムは野菜や果物、海藻などに多く含まれています。代表的なものとして、野菜では、ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、いも類など。果物ではバナナやりんご、アボカドなどがあります。中でもほうれん草とバナナは、季節を問わずいつでも手に入りやすい上に、+αの効果も期待できます。


「ほうれん草」にはカリウムの他にも、血管の拡張作用があり血圧を下げる効果のある「NO(一酸化窒素)」の元となる硝酸塩、ビタミンC、鉄分などが豊富に含まれており、まさに血管を守るお宝フードです。

「バナナ」には、降圧効果で注目が集まるGABA(γアミノ酪酸)も豊富。バナナに含まれる多糖類(グルカン)は、NOの産生も促します。食物繊維も豊富で、腸内環境を整える効果も期待できます。実は、血圧コントロールのためには腸内環境を整えることも大切なのです。

そんないいことずくめのカリウムにも、弱点があります。カリウムは水溶性のため、ゆでたり、長時間水にさらしたりすると成分が水に流れ出てしまうのです。例えば、ブロッコリーやほうれん草などは、ゆでるとカリウムの量が半減するため、電子レンジや蒸し器で調理するのがおすすめです。ほうれん草を冷凍するのもNG。冷凍すると65%ものカリウムを損失します。

じゃがいもやさつまいも、にんじんなどの根菜もカリウムが豊富ですが、その多くは皮に含まれています。ゴシゴシ洗いを避け、できるだけ皮ごと食べると流出を防げます。

また、野菜を細かく切れば切るほど、カリウムは流れ出ます。細かくカットした野菜を、あく抜きのために水でさらすのはさらにNG。大きめにカットして、下茹でせずに皮ごとスープなどに利用すれば、カリウムがしっかり摂れます。

塩出し力を最大限に生かすために、調理法に注意してカリウムを効率的に摂取しましょう。

血圧対策によい食べ物②「カルシウム」の多い食べ物

牛乳や乳製品に豊富に含まれるカルシウムにも、過剰な塩分を排出させる効果があります。牛乳と血圧の関係を調べた調査では、牛乳摂取が多いほど血圧が低いという結果が出ています。

中でも牛乳は優秀な食材です。たった1杯飲むだけで、たんぱく質、カリウム、カルシウム、ビタミンDなどを一度に摂取できます。牛乳を飲むと、カリウムを含むミネラルの効果で血管の柔軟性が高まり、血流がアップ。血流が改善することでNOが増産され、さらに血管が拡張します。他にも、牛乳に含まれる乳清たんぱく質が血圧上昇ホルモンを抑制。ミネラルとの相乗効果で、血圧上昇を抑えます。

「塩分を摂り過ぎたら、牛乳を1杯飲む」。この習慣を、今日からでも取り入れましょう。

カルシウムを多く含む食品で、もう一つ注目したいのがヨーグルトです。ヨーグルトには牛乳とほぼ同等のカルシウムが含まれています。カルシウム以外にもたんぱく質やビタミン、乳酸菌など、多くの栄養素が含まれているので、毎日の食事に取り入れるのがおすすめです。

血圧対策によい食べ物③「腸活」に役立つ食べ物

人間の心身の健康と密接な関係がある「腸内環境」が、血圧にも大きな影響を与えることも、近年研究されてきています。

血圧が高い人を集めて腸内環境を調査したところ、腸に問題がある人が多いことが分かりました。主な理由に挙げられるのが、「腸脳相関」です。不規則な食事や精神的なストレスで腸に負担がかかると、脳が反応して交感神経が活発化しやすくなります。すると腸内細菌のバランスが乱れ、腸が炎症を起こして、血管を拡張するNOの産生が低下してしまいます。

こうした負の連鎖を断ち切るためにも、腸内環境を整える効果のある「ヨーグルト」は有効です。ハーバード大学の研究で、1週間に5杯以上のヨーグルトを食べた女性は、高血圧のリスクが20%減ったという報告があります。ヨーグルトなどに含まれる乳清由来の「ラクトトリペプチド」は、高血圧だけでなく、動脈硬化を防ぐと注目されています。

血圧対策によい食べ物④「血管拡張」に役立つ食べ物

血圧対策では、血管を拡張するガス「NO」の産生を促す食品も積極的に摂りましょう。

近年、スーパーフードとして注目を集める「ビーツ」には、NOの生産を促す成分が多く含まれています。その他にも、抗酸化作用が高いポリフェノールの一種であるベタシアニンやトマトの約2倍のカリウムも含まれており、塩出し効果が期待できます。

高血圧の予防のためにも積極的に摂りたいビーツですが、抗酸化作用を余すことなく活用するには、葉も一緒にジュースにして飲むのがおすすめです。

血圧対策に役立つ栄養価の高い食材はまだまだあります。

「なす」は、ポリフェノールが豊富に含まれる上に、高血圧予防に有効なGABA の含有量の多さで群を抜きます。GABAには、血圧を上げる大きな要因である交感神経の働きを抑制する効果があるのです。栄養素が多く含まれる皮はむかずに食べましょう。

また、血圧が高い人に取り入れてほしいのが、「食後のお茶」の習慣です。緑茶に含まれるカテキンはわずか1~2時間で体内に吸収され、食後の血圧の上昇を抑えてくれます。

刺身のつまと共にお皿に盛られていることの多い赤紫色の「蓼(たで)」には、塩出し効果のあるヒペロシドという成分が豊富に含まれています。その含有量はなんと、高血圧予防としても使われる漢方薬「サンザシ」の500倍! これから刺身を食べる時は、蓼も一緒に食べましょう。

まとめ

血圧ケアには、基本の「減塩」を中心に、「塩出し」効果のある食材を積極的に取り入れて、無理なく血圧コントロールを続けていきましょう。今回ご紹介した食材や調理法をぜひ参考にしてみてください。